【短】だからもう、俺にちょうだいって。
実は去年のバレンタインは恥ずかしすぎて渡せなかったという思い出があって。
当日に渡すことができなかったチョコレートは、バレンタインが過ぎてから一緒に開けて食べたんだっけ。
だから今年の今日という日は、私にとっても特別な気持ちを持っていた。
「…にしても、まさか結多が付き合うタイプにしてはびっくりだわ」
ピクリと、反応してしまったのは私。
そう、まだ数ヵ月前だったのだ。
クラスメイトたちに実は付き合っていることを話したのは。
もちろんそのときも結多くんの明るさに助けられて、周りから厳しい目を送られることはない日々を過ごしていたとしても。
「おまえ大人しいタイプが好きだったの?てっきり俺は先輩ギャルとかだと思ってたんだけど」
「はいヤマト、お前とは今日から絶交だ。宇宙戦艦にでも乗って消えてしまえよ」
「…お前たまにすげー毒舌だよな。でも馬鹿にしてるとかじゃなく、ただ驚いてさ」
「俺の世界はこのみちゃんが居ないと回らねーの。たとえ周りに“意外”とか言われても、俺たちはお前らの評価のために付き合ってるわけじゃねえんだわ。…これ、あと何回言えばいい?」