【短】だからもう、俺にちょうだいって。
「このみ、結多くんに渡すのドキドキだね…!」
「う、うん…」
いつも一緒に行動をする穂乃花(ほのか)は、自分のことのように応援してくれる。
結多くんはちょうど今、数学のノートを集めて職員室へ向かったところ。
だから時間があるとするなら今しかない。
「穂乃花、私ちょっとだけ後輩のところに行ってくるから…、もし結多くんが戻ってきたら待っててもらうように伝えてくれる…?」
「うん、わかった!」
黒田くんが個人的に私を呼び出すなんて、委員会のことでなにかあったに違いない。
彼はいつも大人しい男の子で、委員会活動もひとりで静かにこなしてしまうような子。
そのとき以外で関わりがあるとするなら、いつもすれ違ったときに頭を下げてくれるくらいだ。
「…あ、先輩」
図書委員の人間しか入ることができない、図書室の隣にある準備室。
ガラガラガラとドアを開けると、背中を向けていた後輩は振り返った。