あさまだき日向葵
「……塔ヶ崎くん、わざとでしょう?」
「いや、だって、この前の花火大会のことあれこれ言って来て、ちょっとうんざり。俺、大人気なかった?」
「……ううん、ちょっと、可哀想だった……かな」
「……聡子も何か言われた? 面識なかったはずなのに『今日全然違う』とか言われてるし」
「私も、大人気なく言い返しちゃったから大丈夫」
そう言うと、吹き出された。
「そっか、それならいいんだ。ちょっとくらい言ってやればいいんだよ。ああいう攻撃性ある奴は、攻撃されたら静かになるからな」

……塔ヶ崎くんのこと、好きなんだよ、あの子。だからそう言ってしまうの。どうかと思うけど、気持ちはわかる。

「あー、で、何食べたい? マジで」
「うーん、おにぎり」
「……それ、うち来た時ね。今度は何か具入れるから」
「うん」

また、行っていいなかな、家。拗ねて避けちゃったのに。手も繋いでいいのかな。このまま。

「オムライス、好き?」
「え、うん、好き」
「旨いとこあるって、行こ」
「……うん」

あー、何かやっと……お腹すいてきたかも。
塔ヶ崎くん見るの、すっごい久しぶりな気がする。髪も伸びたんじゃないかな。
風、吹かないかなあ。青が、見たい。

「前、見て歩かないと転けますよ」
「あ、ごめん」

塔ヶ崎くんが照れくさそうにふっと笑った。
その顔に、心臓がぎゅっと痛くなった。
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