あさまだき日向葵
──
「聡子、眉間のシワ!」
「あ、ごめん」
「悩みすぎ」
「……だって」

だって、オムライスにこんなに種類があるとは思わないじゃない?
キノコのソース?何それ。中がケチャップライスじゃないオムライス?何それ。

「二種類、選んで。半分づつしよう。また来てもいいし」
「いいの? 二種類選べるとなると選択肢広がる」
「……また来てもいいしってのはスルー?」
「ん?」
「いいや、選んで」

私が選ぶと店員さんを呼んで注文してくれる。男の子とご飯なんて初めての私にはどっちが注文するのか、とかそんな些細な事でも悩んでしまうから、すごく助かる。

「私、人生損してたなあ」
そう言うと

「んな、大袈裟なあ」って笑われてしまったけど、オムライス、の話じゃなくて。

オムライスは、一番定番のと、クリームソースのご飯がケチャップじゃない!やつにした。
「何と悩んでたの?」
「ビーフシチューのとキノコ」
「秋と冬って感じだな。その頃にまた来てもいいし」
「うん」
「くっ」

……笑った?
「何?」
「いや、また来るってのをゴリ押しする自分にウケただけ。そんで、サラッと流されんの、切なくておかしくなってきた」

切ないのにおかしいの?塔ヶ崎くんはくっくっくっ、肩を揺らしている。何かツボに入ったっぽい。

< 104 / 186 >

この作品をシェア

pagetop