あさまだき日向葵
「どっちからいく?」
「ケチャップじゃないやつ!」
「ふーん、じゃあ俺は定番から」

「おいし……」
「なあ?」

熱いけど、美味しい。

「じゃ、交換~」
今度はお皿を取りかえてくれた。

「おいし……」
「なあ? って、同じ感想かよ」

ケチャップ食べたらクリームソース食べたくなって、クリームソース食べたらケチャップ食べたくなって、少し食べては交換して、何度も繰り返した。

最後の一口は「どっちがいい?」って選ばせてくれて、とても優しい(そこ?)

「あー、美味しかった!」
「うん、また来よう」
塔ヶ崎くんは自分の言った最後の言葉にもう一度ツボってて、帰り道ずっと笑っていた。

「……明日、会える?」
別れ際にそう言った塔ヶ崎くんに首を横に振った。
「そっか」
「来週、また、お邪魔してもいい?」
そう言うと、ほっとしたように笑った。

「じゃあ」
「うん」

背を向けると、塔ヶ崎くんに呼ばれた。
「聡子、その服と髪、似合ってる!」
「あ、ありがとう」

足を止めてお礼を言う。


「俺と会うのに張り切ってくれたんじゃないの、ちゃんと知ってるから。そこは全然アガらないけど……似合ってるからアガった。じゃね」

今度は塔ヶ崎くんが背を向けるとヒラヒラと後ろ手で手を振った。最後の笑顔が切なそうで、どうして?
今日は会う予定してなかったから、張り切ったわけじゃないのは……そうなんだけれど。
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