あさまだき日向葵
塔ヶ崎くんからメッセージが届いたのは、取り組んだ問題に集中し始めた頃だった。

通知音に塔ヶ崎くんだろうと予感がして、「ピッ」タイマーを止めた。
差出人の名前を確認して、天井向いて吐いたため息は全部顔に落ちてきた気がした。

今、やっと頭の中から追い出すのに成功したっていうのに。
アイコンが美人な猫じゃなかったらもっと苛立っていたと思う。

薄いオレンジの毛色に、赤褐色の縞模様が入ったすらりとした美人猫だ。綺麗な目。
動物を愛する心があるなんて、意外。そう思ってしまって、慌ててメッセージを確認した。

『一回、二人で話したい。佐鳥の予定教えて』

もうすでに、嫌だと思ってしまう。今はそれを顔に出すことを躊躇う必要もなく、何なら口に出しても問題がない。
「ヤだあ」子供みたいにそう言った。
「ヤダヤダヤダ! ああ、嫌!」

さすがに、それを文字にして送るわけにもいかず

『午後はほぼ塾だよ』そう送る。さすがに嘘だと思われたら困るので、さっきマーカーで印をつけた塾の時間割を写真に撮って添付した。

『OK、じゃあ早速明日。10時くらいならいける?』

……返信早い。私も早く返事をしなきゃと妙に焦る。

『大丈夫』
『暑くて、外出たくないから俺んち集合で』

……俺んち?外出たくないから?
どうしよう、もう早速嫌いだ。


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