あさまだき日向葵
「あ、こ、これはいいの、自分で……」
「そ。じゃあ、そっちの手で持って」

……そっち?言われるまま、反対の手に紙袋を、移した。確かに、こっちの手で持った方が塔ヶ崎くんから中身が見えなくていいかも。

なんて思っていたら、空いたばかりの手を包まれる。指先でつんつんされて、指を開けると指示される。ふわっと開いたら、そこにしっかり塔ヶ崎くんの指が絡んでくる。

チラリ、見る。チラリ見られて、ふっと笑う。

「可愛い」

……は?なんて言った?
あ、服!服かな?

「……これ、舞花が選んでくれたんだよ」
「え? 舞花って筒井?」
「そう。塾の帰りに」
「……仲良くなったんだ」
「うん。謝ってくれたよ、ちゃんと」

「……そっか。何だ、気にすること、なかったな」
塔ヶ崎くんが優しく笑った。

「うん、悪い子じゃない」
「あー、そうだな」

少し複雑そうに笑うのは知ってるのかもしれない。舞花が、塔ヶ崎くんを好きなこと。

「私も、ちゃんと謝ったよ」
「うん」

もし、舞花が先に告白してたらこうやって手を繋いでたのは舞花かもしれない。

でも、今は……。
繋いだ手が伝えてくれる感情を感じていたい。好きなこと、感じていたい。自分のこんな感情、今まで知らなかった。
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