あさまだき日向葵
既読、つけちゃったしな。
メッセージも私が『俺んち』を知ってる前提だ。仕方なく『OK』のスタンプだけ返した。

「ピッ」とタイマーを再開させて問題に向き合う。目の前の文字を見てもつるつると目が滑る。

「ああ~! もう!」

「ピッ」とタイマーを止めると特大のため息をそこらじゅうに吐きまくって、わたしの部屋は空気が澱んだように感じた。

そりゃあね、そうでしょうとも。このあたりであそこの家を知らない人はいないでしょうとも。そうでしょうとも。
暑いよね、暑い。暑い暑い!7月下旬とあれば30度超える。35度を超える日だってある。その暑い中、私はあんたんちに行かなきゃならないか!?
暑いからって学校サボりそうな奴にはわからないだろうけれど!ああ、腹立つ!

うちの自宅から2駅向こうの塾へ行くより、塔ヶ崎くんの家へ行く方が近いけど、とにかくイライラして、この日は勉強することを諦めなきゃならないくらい集中出来なくなってしまった。

とはいえ、今後どうするか、塔ヶ崎側のやりたいことと、私側のやりたいことを言い合って、計画立てて、実行して、それだけのことだ。
明日は一瞬で終わる。大丈夫。

『勉強したいなら用意持って来て』
というメッセージが届き、一瞬で終わらないことも想定しなければならなくなった。


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