あさまだき日向葵
聡子の塾のビル前で出てくるのを待った。
授業終わってる時間だけど、なかなか出てこない。何人かパラパラ出ていったから聡子は質問でもしてるのか?想像出来てしまって笑う。

足音がして、そっちに目を向けた。
……聡子……か?いつもと雰囲気が違う?

先生らしき人が呼び止めてテキストを渡してる。やっぱ質問してたんじゃん。それが聡子らしくて笑う。
一瞬、その先生がこっちを見る。別に誰かいるなって感じで見ただけだろうし、気にしなかった。
だけど、その後、聡子の前髪に触れた。

……え?
その先生に何か言われたのか、聡子が俺に気づく。
聡子の耳元で何か言う。聡子が赤くなるのがわかった。先生……だよな?こっからは顔が見えない。スーツしか。

「先生、さようなら……」
聡子は俺が待ってるの知ってるくせに、その人の背中が見えなくなるまで見送った。

「終わった?」
「うん、誰か……待ってるの?」
「聡子、待ってた」
「……うん」

俺の正面に立った聡子は……やっぱり、いつも違った。……俺に会わない時は、こんななんだ?いつもより大人っぽい。

さっきの《《先生》》の態度もおかしかった。あんなこと、生徒にするだろうか。俺が見てるから?……牽制されたの……か?
まさか、大人が高校生に手出す?

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