あさまだき日向葵
気になる。
もやもやする。

……重たそうなカバンを持とうと俺の差し出した手に、聡子は迷うことなく自分の手を出した。 そこにほっとした。

ビルに入ると、筒井たちに出会った。好意的に話していたのに聡子を見ると、その表情を変えた。花火大会の時もそうだった。

「今日、全然違うね。あは、塔ヶ崎くんと会うから張り切ったんだ、かっわいー」
今日?そっか。残念ながら、今日は俺と会わなかった日だ。逆だ、逆。

「え、マジ? 聡子、今日俺と会うのに張り切ってくれたんだ。めっちゃ嬉しいんだけど。そういうの……アガる。今週全然会えなかったんだ。久しぶりのデートなんだけど、女子が好きそうな店、知らない? 」

こいつらが、面識のない聡子にこんな態度を向けるのは、聡子に落ち度があるわけじゃなく、俺といるのが気に入らないだけ。
筒井は悪い子じゃないけど、すごい回りくどい。直接“好き”って言ってくれたら俺も考えたけど、告られてもないのに、どうしようもない。そう思ってたら、こうだもんな。
もう、今は誰かから告られたとしても考えたりしない。

俺のせいで嫌な思いさせるなら、何とかしなきゃならない。あれで収まってくれたらいいけど。
お陰で元カノの話をしそびれた。

美味しいって、喜んで食べたオムライスの店に、いくら「また来よう」って言っても流す。虚しくて、おかしい。
明日も、会わないって言う。

もやもやするけど、俺の方をじっと見る聡子に、ほっとする。

俺のこと、好き、だよな?
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