あさまだき日向葵
「猫って食べ物欲しがらないんだね」
「いや、めっちゃ欲しがるよ、でもテーブルには乗らないようにさせてる。医者の家だしね衛生面うるさい」
「……なるほど、おりこうだね」

猫を褒めたのに、塔ヶ崎くんが「だろ?」と得意気な顔をした。

「ふ、そうだね」思わず笑ってしまった。
「そっちの黒の模様があるのがプラム、焦げ茶色の左にいるのがトマト。その横がプチ。正式名はプチトマト。トマトと親子なんだ。真っ白なのがフェニックス」
「フェニックスって格好いい名前だね」
「うん、あいつ死にかけてて、ダメだって言われてたんだけどね、生命力強かったからフェニックス。な、お前格好いいもんな」

塔ヶ崎くんはそう言って、白い猫にぐりぐり顔を擦り付けた。
お腹のあたりの肌が少し茶色っぽい。
「少し、肌が弱い?」
「ん、これただれてた後なんだ。綺麗になったけれど、ちょっと跡が残るみたいだなあ」

何か意外だった。猫の種類なんてよくは知らないけれど、ペルシャ猫とか飼ってそうなのに……。

「もしかして、元野良猫? 」
「そう、最初は家族にイヤ~な顔されたけどね。毛があちこちに着くし、不衛生だとか何とか。今はぞっこんで、コロコロ常備して仕事行く前にシャワー浴びてるわ」
「この可愛さには抗えませんねえ」

なんだかんだ、5匹にまで増えるってことは最初の1匹で猫にハマっちゃったんだろうな。
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