あさまだき日向葵
好きと嫌いは紙一重、その意味がわかった気がする。

どこかで、こんな風に生きたいと思っているのだ。やってみたかったから、やる。
それは、私には出来ないことだったから。

それと、この恵まれた環境、それが羨ましかったのだと思う。
塔ヶ崎くんは誰からみても《《恵まれた環境》》だ。だけど、私にとってはなおさらそうなのだ。

「何?」
そう訊かれて、じっと見てしまっていたことに気づいて目を逸らした。
この距離で目を逸らすなんて逆に不自然だろう。

ふうっとため息を吐くと、手で梳き上げる。所々現れた、淡いブルーが見え隠れして、とても綺麗。
はらはらと髪は元通りに額に落ち、綺麗な目も髪越しにしか見えなくなってしまった。

急にバッとこちらへ顔を向けられ、その動きで前髪が揺れ、再び現れた綺麗な目で貫かれた。綺麗な人の視線て、刺さるんだ。

「おい! 見てたよな?」
ビシッと指さされて

「み、見てない見てない!」
慌てて手を顔の前で振ったけど、この距離でそんな言い訳が通用するわけもなく……

「……見て、ました……」
と、すぐに認めた。

「うん、今だけじゃなくて。学校いる時も、見てたよな?」
自惚れすぎじゃないの?って言ってやりたくなるセリフだけれど、事実である以上は、素直に頷いた。
何よりそれが《《好意的な視線》》に自惚れたわけじゃないのは、塔ヶ崎くんの顔を見ればわかった。
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