あさまだき日向葵

つまり……
私が塔ヶ崎くんの事を嫌いだってこと、隠していたつもりなのに、本人に気づかれていたってことだ。
嫌っていたくせに、申し訳ない気持ちにはなる。
顔は下を向けたまま、そっと視線だけを上げると、塔ヶ崎くんは気分を害した様子でもなく可笑しそうに笑った。

「そりゃ、気づくよ。佐鳥すんげぇ顔で俺の事見てたもん。……そんなに嫌われるような事、した？ 身に覚えは、多分ないんだけど」
「うん……私も何とかしなきゃと自分の感情を分析してみたんだけど、どうにもならなくて……」

塔ヶ崎くんがピクリと片方の眉を上げた。

「……それ、結構マジなやつじゃん。そっかあ、感情ってどうしようもないもんな。あー、陽太か昂良とペアになれたら良かったんだけどな。向こうは向こうでペアが逆なら良かったんだろうけど……」

塔ヶ崎くんがこう言うってことは、陽葵の気持ちも清夏の気持ちも気づいてるってことなのかもしれない。

「……ごめん、なさい」
「いや、別に謝られることじゃない。それぞれが単独で好きなことしても良かったんだろうけど、陽太が……松下に少しでもチャンスをあげたかったんだろうな」
「……そうだと私も思う。でもいいのかな？
日野くんは自分の気持ち……」
「うーん、そこが陽太の良いところでもあって、悪いところでもある」

肘に頭を乗せて、称えるように、呆れるようにそう言った。