あさまだき日向葵
好きと嫌いは表裏一体。
好きの対極に位置するのは、嫌いではなく、“無関心”だ。
「塔ヶ崎くんが、私に嫌われようが、好かれようが何とも思わないのは、私に対して“無関心”だからだね」

そうだ、私はそれにもずっと苛立つような感情を覚えていた。塔ヶ崎くんが私に話しかけるのは陽葵と清夏の友達だからだとずっと思っていた。

「いや、ちょっと待って……」
「だって、そうだよね、塔ヶ崎くんがさあ、いつも私に話しかけるのって……」
「ちょ、待ってって」
「ついでっていうか、陽葵と清夏と一緒いるからで……」
「待てって、だから……」
「そうだ、ずっとそう思って」

「聡子!」

名前を呼ばれて、やっと塔ヶ崎くんの方を見た。
「だって、だって、そうじゃん」
情けなく、声が震えた。

「順番に、ゆっくり。な?」
私がパニックになっても、塔ヶ崎くんは落ち着いてる。だって、何とも思っていないから。

勢い任せに喋ったせいで、何事かと大きな目を開いて動かない猫たちが目に入った。
急に冷静になって、一人でわあわあ騒ぎ立てたことに恥ずかしくなって俯く。

塔ヶ崎くんはパーシモンを抱き上げると、パーシモンの背中をフィルターみたいにして空気を吸って、大きく吐き出した。

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