あさまだき日向葵
──翌日
父親と母親が出勤して一人になると案の定、いつもは捗る勉強にやる気がおきず、昨夜に仕上げておいて正解だったと安堵した。

今日も昨日と代わり映えしない服装。足元だけサンダルにしようと思う。
人の家にお邪魔するのに裸足でいいのか悩んだけれど、塔ヶ崎くんも裸足だったしいいか。何より、せっかくペディキュア塗ったのだから。

手土産も何度も確認した。
昨日は当たり前みたいに、外に出たくないという理由で家に呼ばれてイライラして気が回らなかったけど、お茶におつまみみたいなお菓子とお昼ご飯まで頂いてしまった。こっちは手ぶらで行ったのに。
塔ヶ崎くんのお家ならいつも高級なもの食べてるだろうから悩んだけれど、糖質カットのクッキーにした。何となく健康に気遣ってそうだったから。美味しいのか、わからないけれど。やっぱり、あんまり喜ばれないのではと紙袋の上から覗いては閉じ、覗いては閉じ、そうこうしているうちに家を出る時間になってしまった。

少し伸びてきた前髪をサッと指で散らし、家を出た。

夏の日差しは日に日に容赦なく、どこかの庭木に止まった蝉が熱心に雌を呼び込む声を張り上げていた。
じわじわ滲んで来た汗が、流れるくらいになってしまい、ハンカチで押さえる。
……制汗スプレー振ってくれば良かった。そんな事が気にかかった。


< 29 / 186 >

この作品をシェア

pagetop