あさまだき日向葵
結局、成績がいいから自由にギリギリの出席日数で、本人は何とも思ってないのだろう。
そのやる気のなさが余計モテる要素だったりするんだろうな。私が深層心理で憧れたように、淡い気持ちを抱く女の子はいっぱいいそうだ。

……なぜか、さっきの会話から塔ヶ崎くんは極端に口数が減ってしまって、私は鞄からテキストを取り出して広げた。

それを、じっと見てる塔ヶ崎くんに
「……あ、ここでしない方がいい? 今日は帰ろうかな」

広げたばかりのテキストをもう一度閉じた。

「……次、ってわかってんの?」
テキストの上に手を置かれ、直すことも、開くことも出来ない。

「次……?」
次って何だろう。よくわからなくて、塔ヶ崎くんに伺いを立てる。でもどうやら教えてくれる気はないらしかった。

「今やってるのは三角関数の復習で、えっと……等式の証明。加法定理を使って……その次は何だろう、目次見るね」
だから、手をどけてって意味で塔ヶ崎くんの手をじっと見たけれど

「その、次……じゃないだろ」
そう言って、なかなかどけてくれな……と、思ったら、サッと立ち上がった。

「昼飯、何か作る」
「……そ……」
「おにぎりでいい?」
「ありがとう……」

塔ヶ崎くんは、 ふっといつもとおりに笑っていたけれど、次って何だろう。テキストをペラペラと捲ってみたけれど、しばらくは三角関数が続いていた。数Ⅱではかなりの比重だ。
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