あさまだき日向葵
「美味しい……何これ!」
「米、海苔!」

作ってくれたのはシンプルな小さめの塩にぎり。それに焼き海苔が巻かれたもの。

「何でこんなに美味しいの?」
「契約農家の米、有明海産の海苔。ミネラルが多くてしょっぱさがまろやかな、沖縄の塩。それを俺が握っただけ。でも素材がねいいんだろうね。この食い方か一番旨い」
「すっごい、こだわってるんだね」
「俺んち、みんな忙しいからな、食べ物くらいしか娯楽が無くて……。まあ母親と姉が色々好きなんだよ」

と、目の前に具沢山のお味噌汁を置いてくれた。味噌とかもこだわってるのだろうか。

「今日は豆味噌。夏は入れられる野菜があんまり無いからなあ。本当は根菜入れて豚汁にしたいところ。暑いけど」
「あ、少し甘いね。豚汁は冬のお楽しみだね」

茄子とお豆腐、玉ねぎが入ってる。豆味噌、美味しい。お出汁もこだわってるのかなあ。
おにぎりの横にきゅうりと黄色とオレンジのプチトマトを置いてくれた。

「これは裏庭の家庭菜園、ばーちゃん作」
「何か私、こんな色々頂いちゃっていいのかな……」
「いーの、いーの、毎日たっぷり()るからね」
「というか、すごいね。料理出来て」
「……これ、料理か?」

切っただけのきゅうりを指差して塔ヶ崎くんは複雑な顔だ。


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