あさまだき日向葵
ナ、オォーン
ちょっと癖のある鳴き方。見上げてくるその猫は、少し前の彼女が連れてきた。
陽太のボランティア先で出会った女子大生。
昂良の彼女とその彼女が仲良くて何となくよく顔を合わせるようになった。
片方がカップルだから、それに触発されたのか「私たちも付き合う?」
その場の雰囲気だった気もする。綺麗な人だったし、喋りやすいし、悩むことなく頷いた。

……断れば良かった。
そしたら、今も友達でいられたのに。

昂良と彼女がうまくいってないって知ったのはすぐ後のことで……俺たちも同じような理由ですぐダメになった。

付き合った日から少しずつ好きになって、好きが大きくなった頃に振られる。立ち直るのに時間がかかる。
付き合ったのはノリ。立ち直るのは……逆にすごいエネルギーを使う。
また誰かが付き合ってって言ってくれるのを待てばいいのか……。

彼女を引きずってるわけじゃない。ただ、パーシモンを見ると、つらい感情だけが思い出され、切なくなる。

「おいで、パーシ」
膝の上が温かい。俺は、彼女とじゃなくて、このパーシの方と縁があったんだろうな。こいつも、随分な美人だ。

今度は付き合う前に、相手を知れたらいいなと思う。それ、俺の性に合うか微妙だけど。しんどいのはちょっと、勘弁だな。
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