あさまだき日向葵
佐鳥聡子が家に来たのは約束通りの時間。

保険の外交員並だな。
『自宅にお邪魔する際はね、早く行きすぎては駄目よ』って母親が言ってたっけか。

……なのに、なかなか家のドアが開かない。
庭に出てみたら、ひまわり見てる。
祖母といい、母親いい、花が好きなんだな、女って。
ねーちゃん……は、ひまわり《《は》》好きって言ってたな。

ダルそうに来るのかと思ったら、学校にいるのと同じように、佐鳥らしい飾らない服装。

嫌われてる自覚はあった。それに、この意味があるのかないのか目的を見失った『夏休みの思い出』で、一番巻き込まれただけの俺たちのペア。
佐鳥は勉強に忙しいだろう。初日に終わればそれでいいかと思った。
夏休みの初日の午前中。どれだけさっさと終わらせたいんだってレベルで……

気が利かないほど、何も食い物がなかった。しまったな……母親とねーちゃんの謎の食べ物ばかりだ。
ドライルバーブ?何これ。茎?食べてみたけど、何かわからない。普通のフルーツとナッツでいいか。たぶん、砂糖も塩も入ってないやつだけど……

佐鳥聡子は意外によく喋ってくれた。
俺を嫌いな事を認められて、苦笑いしたけど。仕方がないし、責める気もなかった。
合う合わないもあるだろうし、それに不便を感じるほど接点もないといえばない。

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