あさまだき日向葵
「……授業をサボる。とか、そんな事は当然だけど……友達と夜に出掛けたり、どこか遠くへ行ったり、何かそんなはっちゃけたこと!」
「……あ、そう。はっちゃける、ね」

塔ヶ崎くんは、ストンともう一度座り直した。

「……塾で帰りが遅くなったことはあるよ?
でも、塾のふりして遅くなったことはない 」
「……なるほど。火遊び的な?」
「うん、花火大会も、手持ち花火も親としか行ったことないし、したこともない」
「……ああ、うん。水入ったバケツ持って行きそう」
「……チャッカマンとろうそくも持っていくよ。あと虫除けスプレーはしてから行く」

塔ヶ崎くんはどうしてか、スマホを見ながらわくわくした顔をしだして……

「聡子、来週の花火大会行こうか」
と、笑った。

「浴衣、金魚のしかないよ?」
「……今時、逆に新鮮だな。子供用でもバラ柄とか、レースついてるぞ? つか、浴衣着てくんの?」

そうか、両親に着せられた浴衣は金魚の柄で、兵児帯だった。あれ、まだ入るわけないよね。って、塔ヶ崎くん女子の浴衣に詳しい……。これだけでもう、もやもやと胸に霧がかかる。

「だから、聡子、眉間のシワ!! 妹の浴衣……だっつの」
言われて、パッと心の霧が晴れる。

「その顔……。うーん、マジだと受け取らせてもらう」
塔ヶ崎くんがちょっと赤くなった気がして、私の顔はどんな顔なのだろうか。
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