あさまだき日向葵
「お母さん、浴衣買ったらダメ?」

夜、食事の時間にそう言うと、母親が驚いた目を寄越した。
「珍しいわね。お祭り?」
「そう、友達と花火大会行こうかって」

「……金魚の浴衣があったわね。って、そんなのもうとっくに入らないわよね。そっかあ、買いに行こうか。週末」
「いいの?」
「いいわよ、変な子ね」

────

「こんな値段のでいいの?」
母親はそう言ったけど、たぶん1回しか着ないだろうし、十分いいお値段がして、私は驚いた。
青地に白い花柄、白地に青い花柄。一つ一つ手にとって、合わせてみる。
「こっちの赤の牡丹も可愛いわよ?」
「んー、こっちがいい。それか、こっち」

「……聡子って、青が好きだった? そういえばランドセルも水色にするーっていってたわね。結局、茶色を選んで水色のカバーつけてたっけ」

そう言われて気づいた。……塔ヶ崎くんぽい色ばっかり選んでた。

「うん、爽やかで涼しそうだし」
「……そうね。髪の毛、短いから結ったりはできないけど、せっかくだし買ったら?」

そこには、浴衣に合わせられる髪飾りも売られていた。白と青の造花、ヘアクリップになってるものを買った。

「髪、伸ばそうかなあ」
「そういえば、中学からずっとその長さだものね」

肩に届くか届かないか、そのくらいの長さだった。
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