あさまだき日向葵
何組の手を繋いで歩く、カップルを見かけただろう。こんなに世の中には恋人がいる人がいるんだ。
私には別世界の様に見えた。
屋台の焼きそばのソースの焼けたいい匂い。
私には懐かしい、子供の頃の記憶だ。お祭りとか花火の日はわくわくして楽しかったなあ。
それよりずっと……今はわくわく。わくわくじゃないな。ドキドキして、楽しみなのに、恥ずかしい気持ちもあって、どう思うかな。
塔ヶ崎くん、私の浴衣見て、どう思うかな?

……って、私はどうして一人で歩いてるんだろう。家も近いのに、現地集合……なのはなぜだろう。
人ごみを寄り添って歩くカップルが妙に羨ましく見えた。夕ごはんとかどうしたらいいんだろう。屋台?
歩いてる人を見ると、屋台に並んで買ったり、買ったものを手に下げていたり。
こういうの初めてで、どうしていいかわからない。

一人で歩いてる女の子、私だけじゃない?
私が隣を歩くの、恥ずかしくないから『行こうか』って……言ってくれた、んだよね?

不安になった頃、着信の音が聞こえた。

『聡子、着いた? 場所わかる?』
えっと……何か目印になるものを探して、ビルの看板をそのまま伝えた。

『OK、そのまま階段上って、左手見て』
言われるまま、そこに行くと、塔ヶ崎くんが手を振ってるのが見えた。
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