あさまだき日向葵
あ!場所、取ってくれてたんだ。だから現地集合?回りのスペースがどんどん埋まっていく。……これ、相当早く来てとっていてくれたよね?
お礼、お礼言わないと。こうなるの知ってたから早く来て場所取ってくれたんだ。

……こうなるの知ってた……
そうか、初めてじゃないよね。慣れてるよね。ああ、せっかく取ってくれたのに、こんなことでもやもやするなんて。立てた膝を抱えて俯いた。
これ、やきもちだ。……私、塔ヶ崎くんに彼女が出来たらとか、隣にいたら、とか……それに嫌だって思うどころか、昔の事にも嫌だって思うんだ。そんなの、仕方がないことなのに。

「あれ、何? 疲れた?」
声がして、慌てて顔を上げた。

「場所、取ってくれてありがとう! 大変だったんじゃない?」
「浴衣で立って見るのしんどいもんな」

二人分のスペースに塔ヶ崎くんも腰を落とした。
「暑いの、嫌いなのにごめん」
「……はは! そんなのみんな嫌いだろ。でもこういうのはいいよね、はい」

そう言ってよく冷えたペットボトルのストレートティーを渡してくれた。

「あ、ありがとう」
「ん」

それから、信玄袋から扇子を出してパタパタと扇いでくれた。

「……扇子? うちわじゃなくて?」
「あー、うちわって何気に邪魔なんだよ。背中に挿すのも暑いし。片手塞がるし。扇子は袋入れられるしな」
「へぇ」

慣れてるんだね、やっぱり。その言葉を飲み込んだ。
< 70 / 186 >

この作品をシェア

pagetop