あさまだき日向葵
「何? 手繋ぎたいの?」
どうやら、私は通りすぎるカップルの手をじっと見ていたらしい。
「んー……いや、見てただけ。みんなこんなに付き合ってるんだなあって……」
「付き合ってるとは限らないんじゃない?
まあ、二人でこんなとこ来るってことは、どっちか、もしくは両方にそんな気があるのかもね 」
「……そっか、そうなのかもね」
付き合ってなくても、どちらか、もしくは両方の恋心がそこにあって……そう思うとすごいなあ。
「こんな人混みだと、『はぐれたらダメだから』とか『浴衣だと歩きにくいから』とかそんな口実で手繋げるもんな」

ははっと笑う塔ヶ崎くんをじとっと見つめた。そんな風に手を繋いだのかな。誰かと。

「あ、いや……手の内バラしちゃったな」
ポリポリと鼻先を掻く。

私たちも他の人たちから見たらカレカノに見えるだろう。男女である限り。一先ず、私と塔ヶ崎くんの外見がカップルっぽくないのはさておき。

「確かにね」
「んー? ああ、手?」
塔ヶ崎くんの目が、通り過ぎるカップル……かどうかは一見わからない、手を繋いでる男女を追う。

「違う。カップルじゃなかった場合。……どちらか、にそんな気があるっていうの。私たちもそうだもんね」

私《《が》》塔ヶ崎くん《《を》》好きだからここにいる。
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