あさまだき日向葵
ドンッとお腹に響くような音がして思わず身をすくめた。

「……始まった」
「すごい、ここ。こんなに近くで見たの初めて……」
「うん、音にビビるよな」

いい場所取ってくれたんだ。
「綺麗……」

大きな音がして、花火が上がっていくのが見える。少し遅れて大きな大きな花が次から次へ空に咲く。

わぁっと歓声が上がる。
すごく、綺麗。わかるなあ、こんなに綺麗だからみんな好きな人と見たいんだ。
時々、横を見るとちゃんと好きな人が隣にいて胸がくすぐったい。
花火の光が塔ヶ崎くんの顔を照らす。花火、近いと色も映るんだ。

「花火、見て下さぁい」
私の視線に気づいてそう言われ

「あ、ごめん」
綺麗だったから、つい。

「見すぎだって。恥ずかしいだろ」
「だって、花火が顔に映って綺麗だったんだもん」

「……そんな楽しみ方?」
って塔ヶ崎くんは笑うけど、花火の大きな音が響く。心臓が、痛いくらいだった。

花火を見上げていると、横から視線を感じる。
「本当だ、映るんだな」
「……うん」

塔ヶ崎くんは、目が綺麗だからよけいに花火が映って……あ、今は私が映ってる。
ふいっと目を逸らされて、私も花火へと目を戻した。
塔ヶ崎くんに触れてる左側が熱い。塔ヶ崎くんの右腕の動きが全部私の左腕に伝わる。
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