あさまだき日向葵
指、と……指。
驚いて、自分の左手に目を落とした。

そこにそっと塔ヶ崎くんの右手が絡んでいた。
「言っとくけど、『はぐれたらダメだから』でも『浴衣だと歩きにくいから』でもないからな」
照れ臭そうにそう言われた。そりゃあ、座ってるんだからわかるよ。
じゃあ、何でだろう。何で繋ぐんだろう。

『二人でこんなとこ来るってことは、俺たちもそうだもんね』
私《《が》》だと思う。でも……少し……そうなのかもしれない。
チラリ、顔を見ると

「ほら、花火!」
と、言われてしまった。

「誰かに見られるよ」
「大丈夫。みんな花火しか見てない」
「あは、そうだね」

空には大きな花火。
あ、これ……ドラえもんだ。塔ヶ崎くんがちょっと複雑な顔をした。

これは……矢が刺さったハート形。
チラリ横を見ると、塔ヶ崎くんもこっちを見てて「可愛いね」って空を指差した。

「うん」
どうなってるんだろう。初めての感情に自分でもどうしていいかわからない。

「聡子、来年も一緒に来よう」
そう言ってくれたことに

「うん、来たい」
泣きそうになってしまった。
綺麗。すごく、綺麗。
塔ヶ崎くんがパタパタ扇ぐ風は私の方へ届くようにしてくれている。暑いのに離れたくないなんて、矛盾してる。

やっぱり、青が好きだなあ。青に統一された花火が上がると、そう思った。




< 77 / 186 >

この作品をシェア

pagetop