あさまだき日向葵
ドンッドンッと大きな音が響く。
次から次へ、どの花火に視点を合わせたらいいかわからないくらい。色とりどり、大きさもまちまちで、光が柳の枝の枝のように流れる。

「フィナーレだ」

……流れた光がすぅっと深い色の空に吸い込まれるように消えた。

「終わっちゃった……」
「だな」

うるさいくらいの花火の打ち上がる音と歓声が止むと、寂しいくらい静かになった。
やがて、ざわざわと立ち上がり、帰る人の列が動き始めた。

「人が捌けてから動こっか。時間は大丈夫?」
「うん、今日は遅くなってもいいってお母さんが」
「……そっ……か」

少し、言い方が気になって、首を傾げる。

「どうしたの?」
「まだ、店やってるし何か買う?」
「あ、出店? うん!」

花火が終るとどうするのが正解なんだろうと思ってたからそう言ってくれてほっとした。それに、もう少し一緒にいられる。
……それにしてもすごい人だなあ。ぼーっと人の流れを見ていた。

「あ! 撰くん!」
女の子の団体が、塔ヶ崎くんに声をかけてくる。
彼を見つけて嬉しそうなその子が、私の存在に気付いて、パッと顔を曇らせた。
私の顔から繋いだ手へと視線が移る。
それから私の顔へと順に目を移す。目があったので所在なく軽く頭を下げた。

その子はふぃっと目を逸らすと
「……あ……彼女?」
張り付けたような笑顔でそう尋ねた。
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