あさまだき日向葵
立ち上がらない塔ヶ崎くんに不思議に思って見下ろす。
「イタタ、足痺れたわ」
「え、うそ。大丈夫? 私が体重かけてしまってたかも」

じゃあ、痺れが取れるまでもう少し待っていた方がいいのかな?

「聡子、立たせて」
と、両手を差し出してくる。
立たせるって私とだと、塔ヶ崎くんの方が体重あると思うから、足を支点に後ろに体重をかけたら……いける?
首を傾げて待ってる塔ヶ崎くんに、早くしなくちゃと、慌てて両腕を掴む。それで、えいっ。力を込めたのに、拍子抜けしちゃうくらい軽く簡単に立ち上がった。……自力で。

変に力を入れてたから、均等の取れなかった私の体重が後ろに傾く。

「わっ」
倒れる!そう思ったのに、私は前に倒れていて、塔ヶ崎くんの胸で鼻を打った。

「危なっ」
「痛っ」
塔ヶ崎くんの、浴衣の匂い。

「え、大丈夫?」
「……」
近い。覗きこむような視線。背中は塔ヶ崎くんの手が置かれたまま。

フィナーレの花火より、私の心臓の方がうるさい。
「……悪い、冗談だったんだけど」
「うん、大丈夫」

さっと離れると、心臓、ドゥウンドゥウン言ってる。変な音。

塔ヶ崎くんはそんな私を気にすることもなくその場を片付けていた。
最後にウェットティッシュで手を拭くと、
「ん」と左手を差し出してきた。
「ん?」
「手!」

反応出来ずにいると、さっと繋がれてしまった。
< 80 / 186 >

この作品をシェア

pagetop