あさまだき日向葵
情緒のないゴミの山に、最後は無理に食べたりんごの芯が刺さった棒と、かき氷の容器を捨てた。
蒸し暑い空気と、花火など見てなかっただろうサラリーマンは日常の中にいて、この混雑に機嫌が悪い。
……あの人に会わなければ、こんなことに気がつかないくらい浮かれていただろう。
あの人が、塔ヶ崎くんの、好きな人でなければ……。
塔ヶ崎くんの目が、あの人の背中を追わなければ……。
「やっぱ、こんだけ人が多いと知り合いにも会うよな」
「私は、誰にも会ってないよ」
私の知り合いには、会っていない。塔ヶ崎くんの知り合いに会っただけだ。
「さっきの団体は同じ高校の子だよ」
「……そうなんだ」
私は知らない人だったし、向こうも私を知らなさそうだった。私が向こうを知らないのは大して他人に興味がないからだけど、向こうが私を知らないのは……私が目立たないからだろう。塔ヶ崎くんと一緒にいるのが不思議なくらい、目立たないからだ。
あの人なら、あんなこと言われなかったんだろうな。
「……聡子」
いつの間に俯いてしまっていて、塔ヶ崎くんが覗きこむ。
「あ、ごめん」
「……わかったよな、あの人……」
「え?」
塔ヶ崎くんが、あの人を好きなんじゃないかなって思ったけど、その表情から、やっぱりそうなんだ。
蒸し暑い空気と、花火など見てなかっただろうサラリーマンは日常の中にいて、この混雑に機嫌が悪い。
……あの人に会わなければ、こんなことに気がつかないくらい浮かれていただろう。
あの人が、塔ヶ崎くんの、好きな人でなければ……。
塔ヶ崎くんの目が、あの人の背中を追わなければ……。
「やっぱ、こんだけ人が多いと知り合いにも会うよな」
「私は、誰にも会ってないよ」
私の知り合いには、会っていない。塔ヶ崎くんの知り合いに会っただけだ。
「さっきの団体は同じ高校の子だよ」
「……そうなんだ」
私は知らない人だったし、向こうも私を知らなさそうだった。私が向こうを知らないのは大して他人に興味がないからだけど、向こうが私を知らないのは……私が目立たないからだろう。塔ヶ崎くんと一緒にいるのが不思議なくらい、目立たないからだ。
あの人なら、あんなこと言われなかったんだろうな。
「……聡子」
いつの間に俯いてしまっていて、塔ヶ崎くんが覗きこむ。
「あ、ごめん」
「……わかったよな、あの人……」
「え?」
塔ヶ崎くんが、あの人を好きなんじゃないかなって思ったけど、その表情から、やっぱりそうなんだ。