あさまだき日向葵
母親から貰った日傘を開く。クーラーで冷えきった体にこの一瞬だけは、外気が気持ちがいい。直ぐに汗が吹き出してくる。
身体、煮えてしまいそう。近くの商業ビルに入ると、館内は塾より寒いくらいクーラーが利いていた。

「中は寒いし、外は痛いくらいに暑くて、体力奪われるね」
わざと明るく振る舞ってくれる美紘に今は救われる。お昼には少し早い時間だけど
「お昼にしちゃおっか」そう言われて頷いた。

そこのファーストフード店に入る。塔ヶ崎くんの家では絶対食べなさそうなジャンクフード。飲み会はアイスティー。レモン。
当たり前だけど、ポーションのレモン果汁がトレーに置かれていた。スライスなんて入ってるわけないよね。

「ねえ、塔ヶ崎くんって、《《あの》》?」
「そうだよ」

珍しい名字だし、そうなるよね。

「そっかあ。そっちの学校なんだね。あの人たちがヤイヤイ言うくらいイケメンなの?
それとも、将来性? 」

……言われてハッとした。あんな大きな病院の子息とあればそんな風に考える人もいるのか。

「わかんないけど、格好いいよ」
スマホを取り出すと、二人で撮った写真を見せた。

「わ、綺麗な顔。すごい……」
美紘の言い方に少し含みがあった。
「何?」
「遊んでそう」
「ぶっ」
「そんなことはないと思う……けど」
はっきりと否定は出来ないな。毎日昼からは何してるのか知らないし。でもやっぱり……そんなことはないと思う。
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