あさまだき日向葵
「聡子、小学生みたいだね」
「……小学生!?」
「そう。両思いになったらそこで満足しちゃうでしょ。両思いになることがゴール。そっから手くらいは繋ぐかもしないけど、別に取り立ててなにもない。彼氏とか、将来結婚とかそういうのには漠然と憧れだけあるけどさあ。そこで終点みたいな恋だよね。中学生になると思い出になっちゃうやつ」

言い返せなくなってしまった。
でも、花火大会に行ったこととか、家で過ごしたこととか、まだ単なる思い出にしたくはなかった。

「キスくらいはしたいよね、もちろんその先も」
「そんなの! つ、付き合ってからじゃないと」
「うん。さすがに付き合ってないのにそうなると遊ばれてる可能性高いよね」
……美紘はやっぱり、ちょっと塔ヶ崎くんを疑っているのかな。

「美紘……付き合ってなかったらどこまでならいいの?」
「……うーん、キスされて付き合おうってすぐ言われるならギリギリOKかな。やっぱ付き合おうって言われてからキスかな? 付き合ってからがベストなのかもしれないけど、お互いに同じ気持ちなら少しくらい見切り発車してしまいそ……」

……だいたいの線引きはわかった。キスが分け目なところも。

『じゃあ、付き合ってなくても、どこまでならいいの? 』
塔ヶ崎くんもそう聞いてきた。

『じゃあ、さ……』
塔ヶ崎くんはあの時、一体何を言おうとしていたのだろうか。
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