あさまだき日向葵
美紘に話を聞いてもらって、午後の授業には差し障らずに済んだ。今までこの塾で会ったことがないということは、私とは違うクラスなのだろう。ほっとしたけれど、あの子たちに出会ったら嫌だし、そう思うと……自習室にも談話室にも行きづらくなってしまった。美紘は気にせず来いって言ったけど、
美紘の塾の日だけ行こうかな。
塔ヶ崎くんの家にも行けないし、当分は家で勉強しよう。

帰り道、ショーウインドーには地味な女の子が映ってた。今まで身なりを気にしなかったツケがまわってきた。ダサいのはわかっていてもどうしていいかもわからない。
髪は伸ばそうと決めていたけれど、塔ヶ崎くんの元カノさんのショートカットでも女性らしい姿を思い出すと、伸ばしたからどうなるわけでもないのだと悟る。
《《顔が》》ダサいのはどうしようもない。

陽葵や清夏と一緒にいたのに、どうしてダサいままなんだろう。
陽葵や清夏なら……何も言われなかったんだろうな。

塔ヶ崎くんから
『明日どうする?』ってメッセージが届く。
直ぐに返信する気にならなくて、夜寝る前に

『ごめん、塾なんだ』って返信した。
『了解』のスタンプだけが返ってくる。

──こんなやりとりを花火大会以来、何日か続けていた。
いい加減にしなくちゃならない。避けたって仕方がないのに。
だけど、もういい気もしていた。二人で花火大会行ったことでペアの役割は果たした気もしていた。
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