あさまだき日向葵
メッセージの通知音がして、バッとスマホに飛び付く。

『みんな、夏の思い出はどう?』
陽葵からだ。
自分から断ったくせに塔ヶ崎くんからじゃなかったことにがっかりして、首をブンブン振った。

『暑いね~。暑すぎるから毎日夕方から会ってるよ』と、清夏がそう返してきた。
清夏、毎日会ってるんだ。

『ほんと暑いね、暑いから私たちは外に出ずに、ずっと室内だよ』

私もすぐに返した。“私たち”だったのは先週まで。今は“私”は、だ。

陽葵も清夏も充実してそうだった。ペアが決まった時はあんなに嫌がってたのに。いいなあ。私も、最初は楽しかった。

充実したペア生活を送っている二人に、とてもじゃないけど髪の毛のセットの仕方とか、服装とか教えてって言えなかった。

家にあるファストファッションでない服はこの前、浴衣といっしょに買ってもらった水色のワンピースだけ。
伸ばしかけの髪の毛は前髪が目に入りそうでいつも指先で払ってた。一つに結ぶにはもう少し伸びないと。中途半端だな。

あの子たちにダサいって言われたからじゃない。だけど、無性に居てもたってもいられなくなって、母親のドレッサーからヘアアイロンを取り出すと、見よう見真似で巻いた。

特に前髪を流すとそれっぽく見えたし、小まめに視界を確保するストレスが無くなった。この日は勉強以外に、ずいぶん時間を使ってしまった。
< 95 / 186 >

この作品をシェア

pagetop