背伸びしても届かない
なのに、周囲の状況がそんな日々を終わらせようとする。
突然、大海原に投げ出されたような感じだ。
私の意思なんてお構いなしに、姉に放り出されようとしている。
一人で生活できないなんて言っている場合じゃない。
"悪目立ちさえしなければ"なんて意識で仕事をしていたら、会社にまで放りだされる。そして、何もできないまま年を取って、独りで死んでいく……。
絶対に、このままではだめだ!
今ならまだ間に合う。余裕で間に合う。むしろ良かったじゃないか。このままではだめだと気付けたのだ。
誕生日、生まれ変わるにはちょうどいい。
これまでの小暮華とは決別する――!
そう決意した矢先に、私がまさに片想いしている人、桐谷さんが向こうから歩いて来る。これはもう、神様の思し召しとしか思えない。
そうでしょう?
誰だってそう思うに決まってる。
千人以上のスタッフが働いているというのに、ちょうど今、廊下の向こうからただ一人歩いて来るなんて。
さあ、妄想の世界の恋から飛び出よう。
妄想世界よさようなら。きっと、新しい私はここから始まる――。