公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「気持ちがいいわよね」

 テラスへ出ると、両腕を空へ突き上げ伸びをした。

 肌寒いけれど、今日も晴れのよう。

 朝のささやかな陽光が、いたるところに溢れ返っている。

 このテラスから眺めることの出来る庭園の向こうに広がる森が、これがまた美しい。

 その森から、小鳥たちの朝のお喋りがきこえてくる。

 手すりまで行くと、そこに両手をついて身を乗りだした。

 その瞬間、違和感を覚えた。具体的には、視線を感じた。
 感じたときには感じる方向、つまりテラスの下へ自分の視線(それ)を向けている。
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