公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね

公爵がわたしに花束を?

「まあ、きれいな花ですね。なんという花なのですか?」
「サイネリアだ。寒さに強い花だ。今年はかなり寒くなるかもしれないから、温室に移すかもしれん。クラリスがテラスに出たときに愛でることが出来るようにと植えたのだが、結局開花に間に合わなかった」

 公爵はこちらに背を向け、花壇の方を向いたままつぶやいた。

 そこまで姉のことを……。

 じつは、姉が花嫌いだということはぜったいに言えない。

 姉は自分が美しいから、人間も含めてすべての美しいものを毛嫌いしていた。違うわね。憎悪していたといってもいいかもしれない。

 たいていの花は美しい。だから、彼女はとくに花を嫌っていた。

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