公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「あとでジリアンに届けさせよう」

 公爵は、そう言いながらこちらに振り返った。

「公爵閣下、ありがとうございます。大切にします」

 単純にうれしかった。だから、即座にそう答えていた。

 花は、心と頭を癒してくれる。たとえ心と頭(それら)が傷ついていたとしても。

 目のまえにあるのとないのとではずいぶんと違ってくる。

「す、すまない」

 そのとき、公爵は弾かれたように背を向けた。
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