公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 静電気。そう、静電気ね。

 って、呑気に考察している場合ではない。

 断ろうとした。その手を離して欲しいとお願いしようとした。

 だけど、その手が心地よすぎて言えなかった。

 気がついたら、豪華な馬車に乗っていた。

 広い車内のクッションのきいた座面に座っていた。

 彼と向かい合わせで。

 心臓がドキドキばくばくし始めた。

 馬車は、静かに走り始めた。
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