公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 なんと、優秀な調査員であるエドモンド兄弟が探り当ててくれたのである。

 姉に関りがあるかもしれない男性のことを。ウインズレット公爵家のメイドのジリアンが目撃した男性を、である。

「偽名かもしれんが、とりあえずジェローム・ダンヴィルと名乗っている。隣国エルガー帝国の商人だ。これもまた怪しげだがな。奴は、ほとんどこっちにいる。が、ときどき隣国に戻っている。ほんとうに商人なら仕入れに帰国しているか、あるいはこちら産の商品を売りに帰国しているかだな。金髪碧眼、中肉中背。とくに目立つ身体的特徴はない。はやい話が、どこにでもいるただの怪しげな男だ。いや、違った。特徴はある。奴は、ヘビースモーカーだ。シガレットを大量に吸う。葉巻ではなく、紙の方だな。だから、いつもシガレットのにおいをまき散らしているらしい」

 ボスの話をききながら、ジリアンの話を思い出した。

 姉は、いつもシガレットのにおいをさせていたらしい。
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