公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね

「姉に会ったのは、死んだときかされた三日前よ。間違いないわ。彼女がギャラガー男爵家から出て行く直前、くだらないことで怒鳴られたから」

　ほんとうは、姉はわたしに怒鳴った上に両頬に平手打ちを食らわした。

　彼女がウインズレット公爵家から戻っていて、わたしが粗末な夕食を出したので、それに怒ってのことだった。

　そいえば、あのときの姉はいつも以上に香水のにおいがしていた。そういうにおいがあまり好きではないから、鼻をつまみたくなった。さらに遡れば、あるときから香水をつけるようになり、そのつける量が増えたのか、それとも香りの度合いが強くなったのか、とにかくにおいがどんどんきつくなった。

　てっきり男性をひっかける、もとい虜にする為の手段かと思っていたけれど、シガレットのにおいを消す為だったのかもしれないわね。

　姉のそういうところもまったく知らない。気がつきもしなかった。