公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 両親は、わたしがこのまま戻ればぜったいに許してくれない。それがたとえ、公爵の希望だとしてもである。

 彼らは、けっしてわたしを迎え入れてはくれない。

 それ以前に、両親はあらたな借金をしているに違いない。

 ギャラガー男爵家の屋敷は、荒れ果てているとはいえ遠からずだれかの手に渡ってしまう。そうすれば、両親ですら居場所を失う。

 それとも、このまま公爵家を飛び出し、文字通り路頭に迷うかである。

 一応、仕事はある。図書館の司書としての仕事である。

 街で安い下宿屋にでも転がりこめば、わたし一人細々と生活は出来るはず。

 そうね。それはいい考えかもしれない。

 ウインズレット公爵家の姉が使っていた部屋で、そう思いついた。
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