公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 カントリー調の建物をグルッと回って側面に出た。彼の背を追いかけるけれど、歩幅が違いすぎる。必死で足を動かさなければならない。

 遠くの方から牛や山羊や羊たちののんびりとした鳴き声がきこえてくる。しかし、いまのわたしにそれを「癒されるわ」などと悠長に感じる余裕はどこにもない。

「ブルルルル」

 すぐ近くで、馬が鼻を鳴らす音がした。

 その音があまりにも近すぎて、おもわず前後左右を見渡してしまった。

 よそ見をしたせいで、公爵が立ち止まったことに気がつかなかった。

 彼の大きな背にぶつかってしまい、その勢いでよろめきそうになった。

「おっと」

 そうと気がついた公爵は、腕を伸ばしてわたしの腰に手を回した。そのまま彼に抱き寄せられてしまう。

 大きな彼に抱きしめられている……。

 そう認識した途端、瞬時に顔が火照ってしまった。

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