公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「ミユ。彼女は、『レディ・ローズ』。おれの自慢のレディ。最高の娘だ」
「ブルルルルル」

 はい……?

 目の前にいるのは、それはもう美しい赤褐色の馬である。

 つぶらな瞳が、わたしをじっと見おろしている。

 イーサンはその赤褐色の馬に寄り添い、可愛らしい顔にニヤニヤ笑いを浮かべてる。

「さあ、ミユ。怖くなければ近づいて『レディ』をなでてやってくれ。ほら、こうやるんだ」

 公爵はわたしの当惑をよそに「レディ」の近くへと導き、あいている方の手で彼女の鼻面をなでた。

 それを見てから、あいている方の手を伸ばして同じように彼女の鼻面をなでてみた。

 初めて触れる馬は、とてもあたたかくてやさしい。
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