公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「寒いだろう?」

 声をかけられ、弾かれたようにそちらを見た。公爵が、いつの間にかわたしの横に座っている。

 もしかして、彼によりかかって眠っていたの?

 衝撃を受けてしまった。

 彼の軍服の白色シャツは、この薄暗がりの中でやけに目立っている。

「も、申し訳ありません」
「いや、いい。今日ははしゃぎすぎたからな」

 銀仮面の下にやわらかい笑みが浮かんでいるのが見える。

「屋敷までもうしばらくかかる。もたれて眠るといい。寄り添っている方があたたかいだろうからな」
「あの、上着……。公爵閣下が風邪をひいてしまいます」

 上着を脱ごうとしたが、彼にとめられてしまった。
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