公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 すると、公爵は傷ついたようだった。

 イジイジするその様子は、微笑ましくて可愛らしい。一瞬、心が揺れた。

 が、すんでのところでこらえた。

 自分は、しょせん「お飾り妻」であること。彼の心の中には、いまはまだ亡くなった姉しかいないことを思い出したからである。

 そのかわり、部屋まで送ってもらうことにした。

 自分の足で歩いて。

 とはいえ、公爵とは隣同士の部屋。だから、送ってもらうというよりかはいっしょに部屋に戻るだけのことである。
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