公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 それでも、公爵はその妥協案を快く了承してくれた。

 そうして、二人で階段をのぼって部屋へ戻った。

 イーサンの揶揄いの言葉と、そのイーサンを諫めるモーリスの言葉に見送られつつ。


 公爵に軍の駐屯地で「レディ・ローズ」の乗り方を教えてもらった後、彼とイーサンと三人で駐屯地内を馬でまわった。

 その際、そこに駐屯している軍の人たちが、手を振って歓迎してくれた。

 公爵は、見た目は威厳がありすぎる。見た目以外では、不愛想で怖くてとっつきにくいという噂がある。しかし、彼は部下たちからずいぶんと慕われている。それを、自分の目と耳でしっかり見聞きした。

 それから、彼はそういう将兵たちに愛想よく手を振り返していたし、わたしを紹介してくれもした。

 わたしの彼にたいするイメージは、最初のものとはおおきくかわってしまった。
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