公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 姉とわたしは、すべてにおいて好みが正反対。だから、彼女の遺したものは着たりはいたりしたくない。
 それは、ただのわたしのわがまま。

 彼女がこの部屋に遺しているのは、夜着も含めすべて公爵が姉に買い与えたもの。このまま放置しておくのはもったいない。

 いくらなんでも、これらを公爵が愛するあたらしい妻に引き継ぐわけにもいかないのだから。

 やはり、わたしが着るべきよね。それだったら、ジリアンもボロボロの汚らしい衣服を洗濯しなくてすむ。

 だけど、今夜は許してね。

 クローゼットに行くと、扉を開けて中に入った。

 実家であるギャラガー男爵家から持って来たボロボロのトランクを開けると、昔着用していた黒色のシャツにジャケット、それから同色のズボンとキャップを取り出す。そして、調査員の必需品である黒色のコートもまたひっぱりだした。
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