公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 こうした路上生活者は、年々増えていっている。

 もともと王都に住んでいる人もいれば、地方の人もいる。

 ファース王国は、たしかに他国に比べれば平和で豊かである。だけど、こういう面もあるということを、多くの人が知らない。とくに王族を含めた特権階級や政府の要人たちは、知っていて知らないふりをしている。

 それが、この王国の実情の一端である。

 ド底辺まで落ちている実家のギャラガー男爵家だけど、それでも夜露がしのげる屋敷がある。飲食物だって、周囲の善良でやさしい隣人たちに融通してもらえる。

 西街区の路上生活者たちに比べれば、わたしなどずっとずっと恵まれている。

 この地域に足を踏み入れる度、つくづくそう実感する。
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