公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 って、マジで?

 そのとき、立ち止まってうしろを振り返りそうになった。そんなバカなことは、さすがにしなかったけれど。

 うしろの連中が、速度を上げて近づいてくる気配を感じたのである。それに驚いてしまい、つい振り返りそうになった。

 かろうじて振り返りはしなかったものの、歩く速度はわずかに落ちてしまった。

 もしかして、うしろの連中はわたしを捕まえようとしている? ということは、強盗かしら? もしくは、少年が大好きな変質者?

 いずれにせよ、わたしに幸運をもたらしてくれる使者でないことだけは確かよね。

 その真逆のことはあっても。

 ということは、いまわたしがすべきことは一つしかない。

 決断から実行に移したははやい。ほとんど同時だった。

 つまり、全速力で駆けだしたのである。

 俊足ミユ様の()の見せどころよ。

 ついて来れるものならついてきなさい。
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