公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 さすがは公爵家である。

 廊下の端に手動式のエレベーターがある。小さなカゴにカートからトレイを移し、紐をひっぱって上下させるタイプである。

「なんでも屋」で働いていたとき、依頼である侯爵家に行ったことがある。そこにも同じような手動式のエレベーターがあり、物珍しさもあって観察してしまった。

 それはともかく、それを使ってトレイをおろしてから自分も階下に向った。

 すると、メイドが数名と執事と雑用係が立ち話をしているのに出くわした。

 こういうときって、たいてい噂話に花を咲かせているのよね。あるいは、だれかの悪口とか。

 具体的には、わたしのことを話題にしている気がしてならない。

 自意識過剰かもしれないけれど。

 一瞬、二階の自分の部屋に戻ろうかと迷った。
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